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スーザン・ピンカー「なぜ女は昇進を拒むのか」

 バニラ・ジェンダー仮説というのは、男女の能力は基本的には同じであり、環境さえ改善されれば、女も男と同じだけ出世する、というものらしいが、そうではない、といっているのがこの本なのだそうだ。
 つまり女は男と根本的に違う、ということである。考えてみれば身体がこんなに違うのに、脳だけは特別扱いというのも変な話だが、これを読むまでそんな考えは私にはなかった。
 自らが分泌する、あるいは、母親から分泌されるテストステロンの量により、生まれる前から男女の脳は異なっており、そこで形成された回路が一生続く。例えば、共感する力や養育的な気持ちは女性の特徴であり、人よりモノにい興味を持ち、長時間働くのを厭わず競争好きなのは男性の特徴となる。そのためかどうかわからないが、女性のほうが寿命が長い。癌の罹患率も男子の方が高いのもこれと関係か?アスペや注意欠陥などの疾患も男子の方が多いのだそうだ。逆にうつは女性のほうが多い。

 リーダーとなって引っ張るよりは、例え優秀であろうとも、給料が低くても人と関わりあう仕事やサポート役を好むのも女性自らの意思であり、金を掛けて昇進させようとしてもムダである、というのである(もちろんやりたい人がいたら阻んではいけないが)。実際に、会社などの昇進の機会では、周囲からの妨害はなく、逆に励まされたり、仕事を続けるようにアドバイスしてくれ、男女の差なく待遇してくれるのだという。
 特に、物理や工学の分野では、たくさんの金を使おうとも、生物学的にそもそも適性がある人は少なく、好きでなくともまじめなので成績は優秀になってしまうので、周囲に勧められるがまま、「いい子」はそれに従って頑張ってしまう、という。職業が自由に選択できるほどに成熟した社会になれば、自然と工学を選ぶ女性は減る。社会主義国などで女性エンジニアが多かったのは選択の自由がなかったからなのだそうだ。
 
 確かに~と思うことがとても多く、これまでうっすらと思っていたことが合点がいくことが多く、面白かった。
 例えば、女性の多くは、別の人生を体験することを好むため、本を読むのはフィクションが多い、というあたり。多分、私の旅行好き・映画好き・本好き・美術館めぐり好きなど、何か体験したいという気持ちがあるのは確かであり、その時間だけ別空間に行くという行為そのものが好きなんだろう。知識を求めていないから、いつまでたっても詳しくはならない。そしてそれは多くの女性に当てはまる傾向なのだそうだ。

 仕事に関していえば、私自身、「女だから」と差別を受けた経験はないし(一般的には、内科や外科が「女は要らない」と公言していた最後の時代であったと思うけれど)、特に働き始めてからは、希少人種だったのでどの時代でもちやほやと優しくされてきたし、「ガラスの天井」ってどういうものかわからなかった。今も教授は一人だが、居心地は特には悪くない。
 周りを見ても、例えば医学部の女子はきちんと勉強していてそこそこ優秀だし、優しい人が多いし目立つことを嫌う。そのためか教授に~とか、部長に~、なんて人はあまりいなくて、自分のペースで自分が納得できる仕事を選んでいる人が多いし、旦那が留学するんだったら仕事を中断してもついていくのに、葛藤はないようで楽しんでいるように見える。それが不思議といえば不思議だったのだが、なるほどね~という感じだ。

 最近「リケジョ」とかいうのに非常に違和感を覚えていた。
 やっぱ、工学部の人は、医学部やバイオ系とは違うよね。一括してリケジョでいいのか?と思っていたが、この本でもそういうデータが出ていた。
 医学部やバイオ系に関して言えば、既に欧米では女子が過半数であり、博士課程などの取得率では女子のほうがいいくらいらしい。日本でも確実に女性が増えている。医者になるのに必要なのは、高校程度の理科・数学で、あとは教科書を正しく読み込み、論理的に正しく覚えることで医者にはなれると思う。医学は理系だけれど、医学部は文系だよね。
 もう一度は読んでみたい。

 拘束時間もそろそろ終わりなので、明日から休みである!何事もなく、よかった、よかった。
 人がいないと仕事もはかどるので、こういうパターン(一般の人と逆パターン勤務)は割りと好きである。 
 残念なのは、姪達はもう学校の準備で実家から戻ってしまい、友人たちにも会えないことですかね。

by uchinadap | 2013-01-02 22:24 | 本など | Comments(0)